(産地の声)vol.1244 <日本人の伝統と文化はどこに?> 2016.6.1
今年は気候が順当なのか異常なのか?生育が早いような気がします。6月に入ったばかりというのに小麦がすっかり色付き刈り取りが急がれます。同じく秋に蒔いた菜種も色づいて上の方は実がこぼれ落ち始めています。
小麦をつくる農家はいなくなってしまいましたが、私は土つくりも兼ねて種まきしています。昨年は空き畑が多かったので1ヘクタールくらい種まきしてしまいました。そんなに需要がないので8割方はモアで切り刻んでいます。
そんなところに自然大好きな写真家さんがきて、「収穫しないんですか?」と。「小麦の値段が安すぎて収穫しても赤字になってしまうので始末してしまうんです」「もったいないことですね。なんとかならないんですかね。」「やればやるほど赤字ではやりようがないんです!」などと話しましたが、写真家さんはもったいないを繰り返しました。私はそもそもあきらめていたのですが改めて、この国はどうなっているのだろうかと思います。
「地粉を食べてみたい」というのですが、「今日本人が食べている小麦粉と違ってふっくらパンではなく、どっしりパンになりますね」「私は全て自分の小麦粉しか食べませんが、天ぷらにしてもカリカリになりません」と言ったのですが、「この麦いただけませんか?」という。
「刈り終わるには時間がかかるのでその間好きなだけ採っていいですよ」と言ったら一輪車を持ってきて鎌で刈り始めました。食べられるものですが製粉してふるいにかける手間が大変ですと言ったのですが、やる気十分で頑張ってました。
その土地その自然環境の土台の上にそれぞれの文化が芽生え発展し、伝統文化が昇華してフランス料理があり中華あり、日本食という伝統的食文化があります。
TPPで日本の農家がなくなれば美しい自然がなくなってしまい天才はでなくなる、と数学者の藤原正彦さんは言ってますが、私は日本の文化が亡くなるのではないか、ということの方が気にかかります。
伝統や文化というのはその土地に根付いて、一人一人が知恵や工夫を積み重ねて、それこそ数百年数千年と培ってきたものです。今の日本人はそうしたことを忘れ、その価値よりも経済成長だとかお金中心主義に惑わされて日本人の誇りを失ってしまうのではないか、と余計な心配をしてしまうのです。
おかげさま農場・高柳功
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