(産地の声)vol.1434 先々週の続きです。 2020.3.4
先々週のこの便りに書いたお肉の話に続きを!というリクエストがありましたので。私の体験からですが、約50年前千葉県に生協がなかった頃ですが、天然牛乳を飲む会というのがありました。何故天然牛乳を飲む会なのか良く分からなかったのですが、その謎解きは3大乳業メーカーの牛乳にありました。
それは牛乳と言っても加工乳だったものが普通に牛乳として売られていた時代だったのです。高度経済成長時代は地方から首都圏に来た人が多く、地方から来た人は絞りたての牛乳の味を知っていました。それがどうも市販の牛乳は違うと感性が働いたのです。本物の味覚を知っている人達でしたから違いが分かったのでしょう。
それで東京方面では四つ葉牛乳とか千葉県では天然牛乳を飲む会というホンモノの牛乳を飲みたいという運動が広がりその延長で私達も大栄直販会を作り直接消費者に野菜の供給をしようとなったのです。
もう一つは、我が家で当時乳牛を飼っていました。そしたらあるとき妊娠障害が出てしまい獣医さんに診てもらったのですが中々治らない。そこで獣医さんが言うには「あとは運動と草を食べさせるしかない。」「本来牛は草原の中で草だけを食べて運動する。」「濃厚飼料という穀物を食べさせて脂肪や蛋白質の多い牛乳を採ろうという食事は牛本来の食事ではない。」そして獣医さんの指導で、草と運動だけで約半年したら健康体になり妊娠を迎えることが出来ました。
農業の世界にも経済主義効率主義がまかり通り、先日書きましたように大規模効率主義が始まりました。一定の囲いの中で密に飼うようになると(=不自然)病気や怪我がでやすくなります。そこで何をしたかというとあらかじめ予防と称して抗生物質を餌に混ぜて飼うようになります。さらに生育促進と肉質の改善?のためホルモン剤の投与が行われるようになったのです。
そういう歴史の中でEUはその影響に危機感を感じ、抗生物質やホルモン剤の餌の混入を禁止したのが確か20年前の頃です。狂牛病が20年前に騒がれましたが、それも反自然的な行為から生まれたと言えます。牛肉や豚肉を食べた残りの皮や骨内臓など残渣物を処理してタンパク源として再利用したのです。草食動物に肉食動物を餌として使い、それがくり返され種の壁を越えて羊の病気が牛にそして人間に感染するようになったのが狂牛病です。 失礼を承知で言えばグルメを追求する割には食べものに鈍感な日本人のように思います。食は命です。
おかげさま農場・高柳功