(産地の声)vol.1471 2020.12.2
問題としていた種苗法改正が通ってしまいました。原則を全面的に許諾制として、品種登録者(=種苗会社)に許諾の申請をして許可を得て許諾料を支払わなければ農地内に種苗を用いてはならない、としています。
今まで通りで何がいけないのでしょうか。何のため誰のための改正なんでしょうか。例えば、お米であればコシヒカリという品種は富山県農場試験場が育成した品種で国民のために美味しい品種を作り出した名品です。
これまでの品種改良は、各県各地方(たとえば東北農業試験場など)で各地域のあった品種を育成して食料の安定増産のために寄与してきました。むろん民間の種苗会社も野菜や花木類など貢献してきました。
が、基幹的作物は公的機関が主に種を育成してきたのです。食べ物は人が生きる基本的必要条件です。食が国民の安定と安心の根幹であったからです。
それが2年前都道府県の行う公的種子事業の根拠法であった主用農作物種子法を廃止させ長い年月をかけ税金で育成してきた貴重な知見を民間にただで解放しろ、そして種子登録者の権利は守るという法律改正は暴挙としか思えません。
ざっくりいってしまえば民間にと言う言葉の実は、多国籍企業の種苗会社のことでしょう。民間に権利を与えて農民の種まきをやめさせる法律のようです。
日本で栽培されている数百種の品種は、篤農家や都道府県の研究者が数十年かけて育成してきたのです。梨であれば20世紀という品種は鳥取県の梨農家が20年近く試行錯誤して育成したものです。また、山形のだだちゃ豆、千葉県の小糸在来など地域の農家が毎年作り続け守り続けた品種です。ひたすら国民に美味しい野菜やお米を提供しようと創意工夫、試行錯誤して作りつづけてきたのです。
種に国境はない。地球上の種は誰のものでもない、と言う主張は正しいと思います。食は命を標榜する私たちとしては種苗業者には利権を与え、作る農民は規制する法律はおかしいと考えるのですが、皆さんはどう思うでしょうか。
そうなっては食の生産が危ぶまれると、生協や農業団体が働きかけて、20いくつかの府県でこれまでのように品種の育成を条例化し始めています。
これを読まれる皆さんもどうか行政に働きかけて、種を民間だけに任せるのではなく公的機関に働きかけていただきたいと思うものです、
自分たちの食べるものは自分たちで守る、そうありたいものです。
おかげさま農場・高柳功