春の桜

(産地の声)vol.1538                               2022.4.7

 おかげさま農場の片岡です。4月に入り新しい生活をスタートしている人が多い時期です。新社会人、転属、入学など4月は生活が変わるタイミングで心機一転する時期ですね。そして何といっても桜の季節。今年の桜もそろそろ終わりですが、その美しさに目と心を奪われる日々です。

  おかげさま農場の近隣では、ソメイヨシノはもちろん山桜があちこちで咲いています。ただ、メンバーは「花見というけど、あれは街の人のやることだな。俺らはそんな余裕が無い時期だよ」と言います。春は夏野菜や田んぼの準備が本格化する忙しい時期なのです。

 例えば、ミニトマトは1年の中で最も寒い2月中頃に種を蒔きます。ビニールハウスの中に温床を作り、その上にビニールトンネルを張って温度を加えて育てます。3月に入ると気温の高い日が多くなってくるので、ハウスの開け閉めや水やりをほぼ毎日欠かさず行わなければいけないようになります。そうすることで、4月半ばに植え付け6月下旬から出荷が出来るようになります。

 さらに、そういった夏野菜の準備の時期と田んぼの準備が重なるのです。田んぼは畦の草を刈り、水を貯めたり抜いたり出来るよう暗渠(あんきょ)という地中に埋めたパイプを整備したり、荒起こしや代掻きなど、いくつも手を加えて田植えが出来るように整えます。また、野菜の育苗と稲の育苗時期が重なるので、毎日あっちもこっちもと、目配り気配りが大変な時期なのです。

 畑、田んぼの準備や苗作りが同時になるのは、ある意味、春は萌える時期だからで当然と言えば当然です。ということは、雑草もどんどん伸びてきます。有機農業の仕事の半分は草との戦いですから、これから秋まで野菜のお世話と草退治がノンストップで始まります。

 ただ、野山ではヨモギが繁茂し、タケノコが旬を迎え、水が湧いている所には野生のセリやクレソンが収穫時となるなど、自然の恵みも訪れます。冬から春、春から夏に向けて生命が躍動するのに合わせて人間も躍動していく。自然の流れに合わせて暮らすというのはそういうことかもしれませんね。

 ちなみに、お花見については「まあ、座って花を見ながら飲み食いはしないけど、車の行き来の際に山桜は見るよな。あれはあれできれいだよな」と。お花見も生活の中に溶け込んでいるのが農村スタイルなのでしょうね。

                        おかげさま農場・片岡