(産地の声)vol.1546 一農家のつぶやき。 2022.6.1
ナス科の野菜は実りが遅い。キュウリなどのウリ科は早い。ミニトマトとナスは2月中旬に蒔いて、3月に移植(鉢植え)、そして4月にようやくハウスに定植したのだが、まだ収穫にならない。
キュウリは、トマトより遅く4月に種を蒔いたが、10日ほど前から収穫している。ナスもようやく花が咲き始め、早いものでウズラの卵くらいにはなってきたのだが、ミニトマトはまだ5段目の花が咲いているところだ。もう一段だ。6段目の花が咲き始めないと収穫とはならない。
急な余談だが、亡くなった母がよく言ってた言葉を思い出す。「親の意見となすびの花は千に一つの無駄もない」と。今は時代が変わってしまって通用しそうにないように思うが、信頼の薄れる世相なのかもしれない。
ナス科の野菜は行儀のよい生育をする。ナスは3枚の葉っぱが出た次は必ず花芽をつける。親木も枝もそうだ。トマトの場合もナスとは違うけれど、3枚の葉が出た次には果房をつける。ナスは単花だがトマトは房になって花をつける。大玉トマトだと5、6個から7、8個の花が咲き房となって実る。ミニトマトだと20、30とブドウのように房成となる。
前述したようにナスのように個別になるのではなく、ブドウのように房成りに実る。そしてナスとは違って側枝を欠き、茎をそのまま伸ばして育てる。その房成の最初を一段目と呼び、3枚の葉が展開して次の2段目の花が咲き・・・となって今が5段目という言い方になるのだ。
あと10日くらいで赤くなり収穫できそうなのだが、種まきが2月の14日なのでほぼ3か月かかってようやく食べられるようになるということ。
もう少しお待ちいただきたい。
ということでずらずらとナスとトマト、そしてキュウリの話を書いてきたが、お分かりだったろうか。なんで書いたかというと、近年作物がどう育つのかまったくわからない人たちが増えているという話をたびたび耳にするようになったから。書いている自分もよくわかりにくい感じがするけど勘弁してちょうだい!
農の仕事は、適期に(旬に)種まきや植え付けをすることも肝要だが、一方で育ちを待つという人間の意志の都合で操作するわけにはいかない、ということ。人も育つのを待つことの大切さを無着先生に教わったことを思い出す。合掌 おかげさま農場・高柳