自立した国家

(産地の声)vol.1572 一農家のつぶやき。         2022.11.30

 世界中が大変動の様相を呈している。この国でも一斉に生活品からエネルギーまで値上がりにあえいでいる。ある意味グローバル化ということの当たり前での結果でもあろうと思うのだがどうだろうか。

 

 農の世界も同じで、肥料や家畜の餌である飼料など倍近い値上がりとなっている。牛乳や牛肉そして豚肉、鶏肉などの畜産経営が破綻しつつある。生産費の6割を占めるという餌代が倍になったら間違いなく採算割れとなる。

 特に日本の畜産業は世界の中でも特殊な形で成長してきた。かって中国を旅行した時、一緒に旅した養豚業の農家が600頭飼っていると話すと、びっくりされた。生き物を飼うには餌がいる。その餌をどうしているのか、という問いだ。

 またドイツでは大量飼いをしていない。20町歩の畑で牛を20頭くらいしか飼わない。どうしてかと聞くと「この畑でとれる収穫物(=餌)だと20頭くらいが限度だ」という。

 つまり確保できる餌の量によって飼える牛の頭数が決まる。日本の畜産はアメリカの余剰農産物から始まって頭数を拡大してきたということだ。自前で餌ができないのだから買うしかない。特殊な畜産とはそういうこと。

 人間もそうだが動物も餌の量によってその個体数の生存数が決まる。そういうことからこの国の農政は自立する気がなかったと言える。自給曲線は下降をたどり今に至っている。先進国は一定の自給率を確保するべく努力してきた。EUなどはEU予算の6割、時には8割を農業予算に計上し耕地と経営を守ってきたが、この国はかけ声だけはあったがその施策は実行力のないものだった。

 農の世界だけでなく、コロナ騒ぎになって日本にマスクがなかったというのも衝撃だった。我が家ではお風呂用のガス器具の取り替えを頼んでいたのだが一向に設置されず、聞くと中国から部品が届かないのでできなかったと。

 日本という国は生活必需品でさえ自国でまかなうことのできない国になってしまったのかとがっかりしてしまった。産業の空洞化ではないのか。自国のことを自国がまかなえない国を自立国家と言えるのだろうか。などと思う。

 足りないものをお互いが貿易することはいいと思うが、お金万能主義、効率化主義だけが先行する情けない国でいいのか。そして20年間所得が伸びない国。御用学者は借金でないと言うが、1000兆円を超す国債発行の国。70兆の収入で130兆円の予算を組んでしまっていいのか。など、この国はどこへ行くのだろう。

                       おかげさま農場・高柳功