(産地の声)vol.1582 一農家のつぶやき。 2023.2.15
2月の中旬ともなると一斉に作付け準備が始まる。食べているだけの皆さんは気がつかないようだが、お米や野菜という農作物の半分は1年に一回しか作れないものが多い。
お米も3月から種まきが始まるが、約5ヶ月から6ヶ月という生育期間を経て収穫となる。もう一度作るというわけにはいかない。当地方で最も作られるサツマイモも年1作しか作れない。ゴボウや里芋もそうだし、当地の産物である落花生なども年一作の作物だ。とは言っても年2作、作れるものもある。大根やニンジンは春作、秋作と作れるし、ほうれん草や小松菜などの葉物は秋から順に種まきして秋冬いつでも収穫するように作付けするものもあるのだが。
世界的に見れば、穀物年度などという見方があり、秋頃に世界の3大穀物お米、小麦、トウモロコシの収穫量を見て世界の食糧事情が発表される。世界人口80億人が食べる分の食料が足りているか、不足すれば穀物の価格上昇は避けられない。隣の中国では猛烈な勢いで食糧倉庫を建設中だという報道があったけど、日本はどうなのだろう。
この国の農地の半分以上は年1作のものだから春の今、農家は周到に準備し、畑や田んぼを耕し植え付けの準備をすることになる。種を蒔く、苗を育てることが始まりなのだが立春を過ぎると忙しくなり、気持ちも急くようになってくる。
仕事は段取り八分というように段取りが肝要だ。種子の準備、育苗、畑の施肥など諸材料や機械の整備やら植え付け道具の手入れなど準備万端でないと始まらない。比喩的に言えば農家は使う人間であると同時に使われる人間でもある。
ということで、既にニンジンの種まきが始まり、サツマイモの苗の育苗が始まっている。下旬にはジャガイモの作付け、3月には稲の種まきと、年間計画に沿って各種の栽培が始まる。
今年の農家の悩みは、肥料飼料など諸資材の値上がりだ。畜産農家は餌代の値上がりで、廃業に追い込まれたという話があちこちで聞く。耕種農家も肥料代が5割から倍近くまで上がってびっくりしている。これで経営が持つのだろうかというのだ。段ボールなどの資材も値上がり危機感が増している。
最低賃金の引き上げなどと言ってるが、そもそも最低賃金程度で何とかやりくりしている農家は、賃金引き下げになってしまうかも知れない。どうしてくれるんだろう。 おかげさま農場・高柳功