キュウリのお話

(産地の声)vol.1600  一農家のつぶやき。         2023.6.21

 気温が高くなり夏野菜が採れだした。前にも書いたが、天候不純だと中々安定しないが、気温の上昇と共に一斉に成長する。

 キュウリの話をしよう。キュウリにはイボがあるが、半世紀前頃は黒イボが多かったように思う。それが品種改良によって白イボが現れ、味見かけとも良くなって、今はほとんどが白イボ系になっている。

 

 自然のキュウリの表面は、白い粉がついたように見えるブルームがあるのだが、これは水分の蒸発を防ぎキュウリを守る役割を果たしていると言われる。しかし、現在市場に出回っているものは、ほとんどがブルームレスになっている。

 どうしてかというと、連作の問題もあるが、病気予防もかねて接ぎ木が主流になっている。その台木を使うとキュウリのブルームが消えてしまうのだ。一見、見た目も青々となって、しかも日持ちが良いので売り手に都合がいい。

 その誕生エピソードも面白い。種苗メーカーも各種の台木を使ってはいたが、ブルームは出ていた。が、あるとき品種改良をした台木ではブルームが出なかった。以来、見た目と日持ちが良いとなって主流になってしまった。

 それが出始めた時は、古漬けのカッパ漬けのメーカーが困ったという話を聞いたことがある。古漬けはパリパリと歯ごたえのあるもの。それがパリパリとしなくなってクニャクニャとなってしまう、ということだった。

 別なエピソード。今から30年以上も前のことだが、タイから有機農業を学びに来たタイ人が我が家を訪れた。彼が話す中で「日本のキュウリは本来のキュウリじゃない」というのだ。何のことか分からず聞き進めると「お店で売ってるキュウリがみんなまっすぐというのはおかしい、不自然だ」という。

 キュウリの始まりはつる性で這いながら成長し実をつける。そして自然状態ではまっすぐもあるが曲がるのが普通で自然だ、という。その通りで「お国に帰ったら日本のまねなどしないで本来のまま作ってね!」と言っといたのだが・・・。

 日本でも長らく地這い栽培だったのだが戦後ハウス栽培が主流となってヒモでつったり、ネットをかける立体栽培が主流となった。そしてここが日本的なのだが、真っ直ぐが良品で、曲がりはB品などという階級をつくってしまった。

 なので農家はB品を毎日食べているが、味、品質共にA品とまったく変わらない。当家で育てているキュウリは昔ながらのブルームありのキュウリで、古漬けにしても歯ごたえパリパリで冬場の良き漬物として食べている。

                      おかげさま農場・高柳功