お遍路へ

(産地の声)vol.1636 一老農のつぶやき           2024.2.28

 農の仕事もさることながら、人としての生き方も大事だ。私は母に「人の道をはずれるな」とよく言われた。

 

 若い時一時は神も仏も信じようとしない時も少しはあったが、出会いというのは分からぬもので、40年ほど前近くのお坊さんに出会い「坊さんもろくなもんじゃない。」と言ってしまったのだが、そのお坊さんは「その通りだ。近年のお寺の存在はおかしい」と返された。うーん、そういう坊さんもいたのかと感心してしまった。

 それ以来、考えが改まり仏教や神社の有り様から学ぶことが増えていった、四国には88カ所巡りがあり、巡礼にはお接待があるという。

 なので、いつかはやってみようと思っていたのだが、田植え前の春仕事の合間の今しかない、と決断した。連れ合いとの、四国88カ所巡りだ。

 一番所から始める計画で、徳島県を目指した。連れ合いは足が悪いので自動車で出かけることにし、なるべく体に負担をかけないようにと、東京から出るフェリーに乗って出発。

 余談だが、フェリーも予約をして乗船したのだが、乗るまでの手続きはまったく人を介しない。手続き所へ言ったら自動発券機があるだけ。予約番号と電話番号を入力して乗船券が出てきた。

 昭和人間からすると、人はまったくいなく、味気ない手続きなのだった。そして乗船したら、今度は食事も全て冷凍食品が用意されて、チンして食べるというシステムになっている。これも味気ない風景だ。それぞれがおよそ無言で黙々と食べる、という人間味のない世界だった。

 徳島まで18時間。夕方出発なので外は真っ暗。朝になって外を見ると太平洋のど真ん中の感じだったが、天気が良くなく、遠くが見えなかったせいかも知れない。それにしても海は広い。思わず童謡の、海は広いな大きいな~などと歌ってしまった。地球は丸い!と目視できた。

 翌日のお昼には到着し、早速車での巡礼が始まった。とはいえ初めてのことなので、一番所で、初めてで何も分からないので、その仕方を教えてもらい、必要品を購入しお参りが始まった。4日間で徳島23番所を回り、帰りはフェリーに乗れず、自走で帰着。メーターは、1200kmを越えた。こころを清める旅で行って良かった。帰れば畑と田んぼが待っていた。今日はジャガイモの植え付け準備を終えた。                                         おかげさま農場・高柳功