(産地の声)vol.1645 一老農のつぶやき 2024.5.1
久しぶりの丸一日の雨模様!予定としては田植えだった。当初の予定からすると10日位遅れているので、足を引っ張るなよ、と叫びたいところだが、やむを得ない。当家は無農薬栽培の為に紙マルチを使用しての田植えなので、雨が降ったら紙が濡れてしまうのでやれない。
とはいえ全田が代掻きを終えていない。残りの田んぼは乾いていて、水不足で代掻きができないでいたこともあったので、そんな田んぼには天の恵みだった。
せっかくの恵みを逃さないようにと、田んぼを見まわり漏水がないか、駆け回った。おかげで体が濡れて着替えをするほど結構な雨だった。
恵みの雨と言えば、宮沢賢治の詩を思う出す。「雨にも負けず」と言う有名な詩があるが、書き出しは、雨にも負けず風にも負けず・・・である。雨や風を否定的に書かれているが、それは厳しさを書かれたのだと思うが、一方で天からの恵みであることも十分承知してのことだろう。
ついでに言えばその中で、寒さの夏はオロオロ歩き、とあるが意味が分からなかった。稲は気温17度以下だと花粉ができず不念になる。北の東北では夏の気温が上がらないと実らないことがあるということを知ってその意味が分かったのだが、苦労して田を作り稲を植えてその結果が実りのないものだったら、と思うと賢治の農民を思う気持ちが痛いほど分かった気がした。
当地の田んぼはほぼ植え終わって、緑が広がりつつある。それにしても稲というのはすごいものだと思う。1グラムにも満たない小粒の種が人間の命をつないできたことに。世界の人口の密集する国は皆お米のある国だ。中国やインド始めインドネシア、フィリピン、日本など東南アジアの人口は地球人口の半分を占める。
無着老師が得度して間もない小学生の頃、法事に同道する中で「おかげさまで」と挨拶したら、師匠に「ほう、おかげさまの意味がが分かるのか」と問われた。お前の命はご飯を食べてのものだ。その一杯のご飯には何粒あるか分かるか。数えてみろと言われた。数えたら3千粒あった。お米の命3千粒があって自分の命が続くということを教えられた、という。人間は他の生き物の命を戴いて命がある。
現代は、飽食の世だ。これでもかこれでもかと食欲望に切りがない。そして、食べ過ぎでダイエットなどと騒いでいる。ダイエットする位なら、食べ過ぎなければいい。ただし食材を選びバランス良く食べることが肝要だが・・・。明日の天気は雨上がる模様だ。田植えの始まりなのです。
おかげさま農場・高柳功