田植えが終了

(産地の声)vol.1649 一老農のつぶやき           2024.5.29

 ようやく田植えが終わった。

 

 前にも書いたが、今年は二組の団体が田植え体験を始めた。榮太郎本舗の皆さんと保育園の年長さんである。

 田植えイベントは結構あちこちでやられているが、田植えだけしてそのままというのが多いようだが、当地の場合無農薬栽培で、途中田ノ草という草退治もしてもらうことを条件にしている。

 植えっぱなしで刈り取りだけというのはいただけない。育てるためにはそれなりの苦労と経験が必要だと思うからなのだが。

 で、植えて2週間ごとに3回田んぼに入ってもらい田ノ草という田んぼを這い回る作業をしてもらう。先日1回目の田の草をしたのだが、大人だけの田んぼと子供達の田んぼを見比べると子供達の方が整然と植わっている。

 田んぼに入ったこともない都会の子供達で、果たして植え終わるまで持つのか、と心配してたのだが、よく持った。最後まで飽きずに植え逐わしたのに安堵した。

 最初は裸足で泥にまみれて気持ち悪いなどと言ってた子供もいたが時間の経過と共に慣れてきたのか、一所懸命になってちゃんと植えたことに感心する。約2時間くらいで3畝(300㎡)の田。13名の年長さんだったが、食事をして感想は「面白かった!」「楽しかった!」となかなかの評価?だったので安心した。

 養老孟司さんではないけれど、「あなたたちの未来は田んぼだ」と言うけれど、大きくなって自分の命が自然からで育ったお米や空気が自分の体を作っている。といった人間形成の一助の体験となってくれれば嬉しい。

 昔、人間は土の化け物だと言った人がいたが、当たらずとも遠からずでと思う。大地で育ったお米や野菜を食べて人間の命はある。そうしたことを実感として持っている人とスーパーに行けばある、などと思う人では人間に大きな差ができる。

 ずっと以前に無着先生の新入社員の研修会で農業の話をしてくれといわれ話したことがある。ところがである。一向に反応がない。私の話が下手くそのせいもあろうが、あまりに反応が鈍いので途中でやめた。

 反対に私の方から質問。「あんた達、食べ物のことをどう思っている?」と聞くと、返ってきた答えは、「スーパーに行けば買えるものだ」「お金を出せば買えるもの」などという返答だった。自分の命の大切さが分かってこそ、他人の命の大切さがわかる。と無着先生は話されたが、そこが分かる人に育ってほしい。

                    おかげさま農場・高柳功