農家をないがしろにする法律

(産地の声)vol.1655 一老農のつぶやき           2024.7.10

 有機農業研究会の機関誌「土と健康」7・8月号が届いた。地産地消、直売所が地域の豊かさ多様性を生み食文化に花を添えてきた、が。

 農家の手つくり漬物が食品衛生法の改正によって全国の直売所から消える?2018年6月に改正食品衛生法による「食品におけるすべての事業者へのHACCP導入の義務化」が決定し、営業許可業種に漬物製造が加えられ、'24年6月1日から全面実施になった。

 

 これは、農家の人が台所や軒先の作業場で仕込んでいた手つくり漬物は、保健所への「届け出」だったものが、保健所の「許可」を受けなければできなくなったのだ。保健所の許可を得るには、各種の設備投資が必要なため、多くの農家が廃業を宣言することになった。よって全国の直売所から手つくり漬物が消えようとしている。

 論説によると、10年以上も前に起きた漬物会社の「浅漬け」による食中毒事件を根拠に、企業から農家まで全部一律にHACCP導入、許可制の網をかぶせたことがおかしい、と。 農家の手つくり漬物では事故はこれまで起きていない。梅干しや奈良漬け、ぬか漬け、味噌漬け等はもともと保存食だからです。

 HACCP(ハサップ)とは、宇宙食の安全性を確保するために始められ、国際的食品管理方法とのことだが、有機農産物の認証の時もそうだったが、この国は日本人が長年培ってきた伝統・文化を簡単に葬り去ってしまうようだ。

 欧米基準にすることが最善であるかのように振る舞うこの国は何なんだろうと思う。尺貫法の時もそうだったが、国際的と言うことでメートル法以外は罰金をかけてまで千年以上もの歴史を持つ文化を断ち切ってしまった。国際的と言うが、イギリスはヤードを使い、米国はガロンという独自文化を捨てていない。

 私のところに来るお客さんの中にも、「これでまた伝統的文化が衰退するね」と言う声を聞く。手つくり漬物が地域から消え、企業が工業的に製造する漬け物ばかりになることは消費者にとっても望まないことではないか。

 もう一点。異常気象や紛争等によって食糧危機に陥った場合増産できる要請できる食糧困難事態対策法が、6月自民公明維新の賛成で可決した。政府の供給目標の指示に対して計画を出さない場合・出してもできなかった場合20万円の罰金が課される。理不尽な法律ができた。

 今や輸入が7割である。それを国は推進してきた。ならば約束通り売ってくれない国に罰金を課してみた方が筋が通るのではないか。食や環境は守るもの。それができないつけを農家に押しつけるとするならばふざけた話ではないか。                               

                                   おかげさま農場・高柳功