お盆です

(産地の声)vol.1660 一老農のつぶやき           2024.8.14

 お盆である。お盆と言えば、13日には盆棚を飾り、先祖を迎える準備をする。

 

2.3日前、農仲間が「盆棚を見せてくれ」と訪れた。「最近、盆棚を飾らなくなったので忘れてしまったので」と。

 今年は11日には盆棚つくりをしてたので、見てもらった。盆棚は、まず竹切りから始まる。竹山に行って盆棚の囲い飾りのための新竹を切って来る。座敷から天井裏まで届く長さの竹を立て、荒縄を張って飾りを付ける。神域に張る結界のようなものと思えば良い。その内に2段の棚を作り、カボチャやナス、キュウリなどをお供えする。13日は先祖が帰ってくるので、お膳を用意してご飯やお吸い物、惣菜を用意して迎えを待つ。と言っても、お墓まで迎えに行くのだが。そして提灯を下げて藁とお線香を持って火を付けて線香を点し、提灯のろうそくに火を点す。「お迎えに来ましたよ」と声をかけて自宅の盆棚まで案内してろうそくを点し、お線香を上げお迎えをする。

 盆棚は、この辺のどこの家でもやっていたことだが、最近はほとんどやめてしまった。面倒だから、と言うのが理由らしいが、先祖を偲び、先祖の思いや苦労などを語る機会で、小さい時はじいさんについてとぼとぼ歩き、昔の話を語ってくれたことが何やら意味あるげに思えたものだった。

 我が家のささやかな歴史を知る機会でもあった。

 お盆になると、我が家からでた叔母さんやおじさんなどが集まって賑やかなひとときでもあって、そこではいろいろな情報が飛び交って世の中の事を教えられた。近年は、行事というものが面倒だの一言で伝統行事が廃れているが、果たしてそれでいいのか、と思う。自分の出自、どのように育てられたのか、どんな事件を起こしたのか、などおじさんや叔母さんなどから聞かされる。小さい頃は寡黙だった、とか、言い出したら聞かないところがあったとか、自分では知らない自分を知る機会でもあったのだ。

 お盆はお寺さんのお施餓鬼で板つくりの卒塔婆を戴く。その板には五つの刻みが入っている。その意味は、地、水、空、風、火だという、大地、水、空気、風、そして太陽を意味するらしい。お寺さんの五重塔の意味と同じだ、と。そうした人の意志の及ばないものに人は生かされているのだ、と。

 そして、生老病死という生命の真理を説いているのだ、と住職はいう。全てのものに感謝し命を全うすることが生きる、ということ。中々それが全うできないでいる。                    おかげさま農場・高柳功