10/17のジンジ

(産地の声)vol.1669 一老農のつぶやき           2024.10.16

 10月17日はジンジと呼ぶお祭りの日。新穀で甘酒をつくり、氏神様にお供えする日で、我が家の毎年の伝統行事になっている。食と命の教室の皆さんと、今年は12日に甘酒の元である糀つくりを計画。前日にお米を水に浸し、かまどと薪を用意してセイロで蒸し上げる。かまどに薪をくべて、セイロで蒸し上げ、ムシロに広げワイワイとみんなで麹菌をまぶして伏せこんだ。

 

 今の人たちは買って食べると言うことしかしない人が多い。なので、これまでの日本人はどのようにしてきたのか一から体験する良い機会となる。

 我がムラでは、ジンジと呼ぶがこれは神社で言うところの、神嘗祭(かんなめさい)のことだろう。稲刈りが終わり、新穀を糀にして甘酒にして神様にお供えする日で、かっては親戚中の寄り合いの場でもあった。

 糀をつくり、その糀を養生して甘酒を造る。その甘酒を氏神様にお供えする。そして、集まった家族親戚で甘酒を戴き、今年の稔りに感謝する日なのだ。

 次に、今では勤労感謝の日となっていが、11月23日は新嘗祭の日でもある。進駐軍のお達しで、勤労感謝の日となったが、伝統的日本では新嘗祭だった。その日には新穀を神様にお供えし、その後に新穀を食べるという順序があった。

 今はそんな決まりがなくなってしまったが、かっての日本の姿は神様が最初でその次が我々が食する、というのが順序だった。私が育った頃は新穀を食べられるのはその後で、場合によっては正月を過ぎることもあった。

 エピソードとして-そんな生活をしていたので、おかげさま農場を始めた頃、お客さんが、新米を早く食べたいということには違和感があった。「何言ってんだ、我々は昨年のお米を食べ、新穀は新嘗祭からなのに」と言った思いである。

 時代が変わったと言えばそうなのかも知れないが、自然の恵みに感謝し、自然に対する畏敬の念がそこにはあったように思う。

 物理学者の竹内均さんによれば、かっての日本人の特質は、感謝の心、勤勉さ、そして正直さだったという。また幕末から明治にかけて訪日した外国人が日本人を語るには、日本人は富めるものも貧しき人も正直で勤勉だったと。日本人を忖度する日本人がいるが、外国人は忖度しない。自国向けにそういう記述をしてきたというのは掛け値なしの評価だったのだろう。 そういう目から見ると、最近の日本人は劣化してきたのではないだろうか、と思ってしまうのだがどうだろう。違うかな?

                      おかげさま農場・高柳功