(産地の声)vol.1681 一老農のつぶやき 2025.15
米つくりに限らないが、収穫が終わったから仕事が終わったのではない。収穫が済んだ後から次の米つくりの準備が始まっている。
秋の取り入れが済むと、秋耕冬耕、畦、排水路整備など田つくりに入る。まず稲刈り後の稲株が残っている。理想的には、刈り取った後すぐにトラクターを入れ、稲株を掘り起こした方がいい。だが、畑の野菜達の仕事もある中で仕事が遅れる。
近年は、夏日が10月まで続くような気候なので、刈り取り株が再び芽を出して結構な成長を遂げてしまう。なので、モアと言う機械を使って雑草も含めて刈り上げる。そして耕耘する。稲株も土に潜り黒い土塊の田んぼとなる。
我が家は今年も遅れ、今になって耕耘している。今期は雨が少ないので田んぼが乾き耕すにはちょうどいいあんばいなのだ。
詩歌詩集が届く。農村の年配者の集まりだが、短歌や俳句、時折の詩など。会の規約には「日々の生活の中から詩歌、文章等を自由にのびのびと合唱のように響かせ合う会とする」とうたっている。その中で、年配の会員がお米について書いているので紹介したい。京都に住む老農がその思いを書いている
題は、米不足に心が痛む、以下
政府の無策や知らんと思ったけど、「お米ない?」子、知人の声、心が痛む。
朝日新聞に小さな文字で、米作時給十円とあり。
大型農家は、朝四時から働いても、機械代燃料費に足りない米代。
機械化で土日百姓、米代は大型機械燃料費に足りず。
昔、30キロ一万円だった米代が、以後ずっと低米価。が少し上がった。
我が村は籾種蒔きから米になるまで機械化 でも時給は知らん。
輸入が止まったら食料は?すべて配給だった戦後が浮かぶ。
いのち守る食べ物は畑にある。這いながらせっせと通う。
自分の食足りても 農を知らない子や知人 思えば心が痛む
田の穂波にいとしさが湧いてくる。水ほしい。草取って耐えた稲。
-と、ぼつりぼつりと書いている。
世相は、お米が上がったの、野菜が高いのとお金のことばかりが語られているが、農の世界とは異次元の思いのようだ。この断絶はいかんともしがたいほどになっている感が強いが、どうだろう。詩にあるように、農を知らない子や知人に心が痛む、田の穂波にいとしさが湧いてくる-と言う心情を分かってくれるだろうか。
おかげさま農場・高柳功