来訪者との話

(産地の声)vol.1687                  2025.2.26

 従兄弟が家族一同を連れて訪れた。父親の一周忌のお参りに来たのだという。従兄弟と連れ合い、そしてその子供夫婦、その子達で10人いたかな。

 

 どこがいいのか分からないが、子供たちが私のファンだという。食べ物の大切さを語ってきたのだが、自らも少しでも自給できたら、と願っているようだ。ジャガイモの植え方だとか、種芋も欲しいというので分けてあげたのだった。

 そうしたら、突然見知らぬ親子が訪問!従兄弟達には早く帰ってもらい、話を聞くことに。おかげさま農場のおまかせ野菜セットを取っていて、是非どんな所か見たい、と来たという。

 「どちらから来られたのですか?」と聞き、「埼玉県の新座市から、わざわざ来るなんて大変でしたね」と話が始まった。何でも連れ合いがガンになり亡くなったばかりだという。分かった時にはステージ4となっており、1ヶ月くらいで逝ってしまった。今後は環境のいい安心して食べられることに心がけたいと。

 どう受け止めていいのか、思案しながら話を聞いたのだが、息子さんの今後のことも考えると今の生活を改めたい、そんなようだった。車で来たのだと思ったのだが、電車とバスを乗り継いで来られたという。

 この辺で住むところはないだろうか、と聞かれたが、急なことで返答に詰まる。寄り添ってあげようと思う。都市生活に疲れ、自然の中で暮らしている姿に何か共鳴するものがあったのだと思う。今の私には寄り添うことしかできない。

 先週15日に蒔いたミニトマトとナスがようやく芽を出し始めた。キュウリやレタスは3日も経てば芽が出るが、ナス科の野菜は芽が出るのに時間がかかる。ハウスの中で温床で育てる。温度設定は20度だ。かっては温床ではなく自然温度で育苗してたのだが、それだと芽が出るのに2週間はかかる。

 「食と命の教室」で、種蒔きからの実習体験をしてもらっている。教室は毎月1回での開催なので、1ヶ月後にポット移植するには温床でないと具合がよくない。

 種を蒔くと毎日の管理に手が抜けない。赤ちゃんと同じで、目を離すわけにはいかなくなる。2、3月の太陽は、陽が強くなりちょっと油断してるとハウス内の温度が30℃、40℃となって焼けてしまう。なので太陽とにらめっこする日が続く。

 人間は、光合成ができない。種の生命力が精一杯発揮できるように手入れするしかない。仲間の一人が言った。「俺たちが作っているのではない。お米や稲が自らの力で育っているのだ。それを戴いて私たちの命がある」と。たいした見識だと思う。

                      おかげさま農場・高柳功